塩月 照美 (しおつき てるよし)
子供のころの私は、当時の男の子では最も大多数だった野球少年のひとりでした。 真っ黒に日焼けしながら野原を駆け回り、日が暮れるまで仲間と野球に興じていました。 その後演劇に興味を持ち、将来の夢が野球選手から俳優へと変わりましたが、その修業の一環として始めたのがクラシックバレエでした。しかしバレエを始めた当初の私も、ましてや野原を駆け回っていた頃の私もまさかバレエダンサーとして人生を歩むことになるとは思ってもみませんでした。
バレエは敷居の高い習い事と思われがちです。たしかにバレエの長い歴史を持つ海外の国々のバレリーナは幼い頃から国立のバレエ学校の寄宿舎に入り、徹底的にプロの踊り手となるべく教育を施されて育ちます。 ある程度大人に近い年齢になってから、そこに付け入る隙があるとはなかなか思えません。
しかし私はバレエが彼らだけのものだとは思いません。彼らを育てる教師や家族はもちろんですが、劇場に足を運ぶ観客、バレエを愛する全てのファンがバレエを支えていると思います。 日本のバレエはまだ100年未満の歴史しかありません。歴史ある海外の国々のように人々の生活に浸透することも出来てはいません。しかしその歩みは確実に進んでいます。 「クラシックバレエ」つまり「古典バレエ」ですが、今も留まることなく進歩を続けています。 決して埃を被った古臭い舞踊ではありません。優れた踊り手が育ち、楽しい作品が生まれ、いつか日本でももっと身近に、バレエを楽しんでもらえる日が来るよう、微力ながら私も努力していこうと思います。
奥泉 香 (おくいずみ かおる)児童・低学年クラス担当